「こんなはずじゃなかった」人生をどう生きるか

先日、自治体主催のセミナーに行ってきました。テーマは「ライフシフト」。そう、今話題のこれです。

パネラーの方々は地元企業の成功者たち。プロフィール紹介ではため息が出るほどの実績が並びます。

人生100歳まで生きるとして、彼らに今後のプランをあげていただく場面があったんですが、意外とみなさんノープラン。「あんまりちゃんと考えたことはありません」という声が聞かれました。「今」に集中しているんだなあと思う反面、私は介護施設で出会った人たちのことを思い出していました。

「何もかもがつまらない」というKさん

Kさんという男性利用者さんがいました。ほとんど自立されていて認知症もありません。

そんなKさんの口癖は「何にも面白いことがない。人生、こんなはずじゃなかった」。

聞けば、自営業だったけどもっと儲かっているはずだった。家族と暮らしているはずだった(当時ひとり身で施設入居でした)。

確かに、今からひと山当てようというと難しいかもしれませんが、博識で知的好奇心の高いKさんならいくらでも面白いことは見つけられそうな気がします。

「何か新しいことを勉強してみるとかどうですか?」とお尋ねすると「知らないことはない」とのこと。

ほほう、そうきたか。と思いつつ、Kさんがガラケーなのを知っていた私は「スマホどうですか?世界が広がりますよ」と提案してみました。

すると今度は「興味ない」とかえってきます。

つまりKさんにとっては「知っている」か「興味ないこと」かのどちらかしかないわけです。その後もあれこれ提案してみましたがなしのつぶて。

多少うつ傾向があるとは思いますが、Kさんのように自由に動く身体があるのなら、ほんのちょっと考え方を柔らかくするだけで「こんなはずじゃなかった」の外側にいけるのになあと思いながら話を聞いていました。

活動的だったのに片麻痺になったYさん

Yさんという女性の利用者さんがいました。意識はクリアですが、片麻痺で常に車椅子です。

若いうち(40〜50代?)に病気で片麻痺になられたようでした。Yさんは食べることやおしゃれが大好きで女子力も高く、車椅子になる前はよく外出されていたらしいので、私などにはそのショックは想像もできません。

時折、Yさんは「こんな体になるとは思わなかった」とおっしゃいました。Yさんはご主人に支えられていますが、それでもやりたいこと、食べたいもの、小さな我慢をたくさんしておられることがわかります。

介護施設を辞めるとき、私は彼女になんて言っていいかわかりませんでした。「お元気で」は酷な気がして、「またね」とも言えない。「Yさんが頑張っていると思って私も頑張るよ」と伝えるのが精一杯でした。

思うようにならなくても生きる100年

人生100年というと、「あれもできる」「これがしたい」と思われる人も多いかもしれません。それはとても素晴らしいことです。

でも一方で介護施設で働いて、思うようにならない人生をたくさん見てきました。むしろ人生とはそういうものかもしれません。思いがけないタイミングで病気になり、ケガをし、あれができなくなり、これもできなくなる。

改めて、100年って長いなあと感じます。健康寿命を差し引いても、残りの10年以上はどうやって過ごせばいいんだろう。どうやれば不測の事態に向き合っていけるんだろう。利用者さんを見ているとお金があればいいというわけでもなさそうですし。

今回のセミナー、平日昼間の開催ということもあってか来場者の多くはリタイア後の人たちでしたが、彼らはまさに切実なのでしょう。

いろいろと考えさせられる1日でした。