生きてるだけで

入浴介助をしていると、利用者さんといろんな話をします。

当たり前ですが、性格もいろいろ。

明るい方、几帳面な方、口数の少ない方・・・。

そんな中、割と多いのが「寂しい方」です。

元々の性格はわかりませんが、寂しい方はややネガティブな発言が多いように思います。

一人暮らしをされている利用者さんが多いからかもしれません。

一方でお子さんと暮らしてても、「娘は何もしてくれない」と感じておられることもあります。

私も一人暮らしをしているので、彼らの孤独のほんの少しは理解・・・というか想像できる気がするんですが、やはり状況は個々によって違うので、基本的には聞き役に徹します。

ネガティブワールドに疲労困憊

ある日のことです。

この日は、入浴希望者が多くて、感覚的には次から次へという感じ。

特に午後は、人手が足りなくて。

忙しい時ほどその雰囲気を出さないよう気をつけているんですが、正直ヘトヘトでした。

この日きつかった理由はもう1つありまして。

ずっとネガティブ発言の利用者さんが続いたんです。

「1人ですることがなくて老いていくばかり」
「娘が風呂に入れてくれない」
「楽しみが1つもない」
「◯◯さんは家族がいるから何でもしてもらえる」
etc・・・

体のきつさと相まって、どっぷり灰色の沼に沈み込んでいくような感覚でした。

わかっているけど

病気でそういう気分になるのは別として、私は基本的には自分の人生は自分次第という考えを持っています。

人と比べたり、ないものに目を向けても解決はしない。

実際、一人暮らしでも朗らかにお過ごしの利用者さんもいらっしゃいます(少なくとも見た目には)。

普段はこういう考えを利用者さんに述べることはしませんが、この日は余裕がないのもあり、少し押し付けるような言い方をしてしまいました。

「そんなことないですよ」
「みなさんそうですよ」
「頑張れますよ」

でもね、そういうことじゃないんですよね。

利用者さんが望んでるのは。

寄り添ってほしいだけだと思うんです。

正解が欲しいわけじゃない。

次から次へと聞かされるネガティブワードに疲労感を覚えつつも、利用者さんに優しくできない自分に、私もまたネガティブワールドに引き込まれていました。。

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目が覚めるひと言

そしてようやくその日も終わりに近づいた頃、ある男性利用者・Mさんの入浴の順番になりました。

Mさん、認知症が進んでいます。

たくさん話される方ではありませんが、会話のやりとりは難しいので、ポツポツと話されるMさんの声に耳を傾けていました。

そしたらね、突然仰ったんです。

「生きてるだけで」

なんですか?と尋ねると、

「生きてるだけで、ありがたいよねぇ」

なんの脈略もなく、突然。

私は自分の心の内を見透かされたようで、本当にびっくりしました。

その日にあったいろんなことがこの言葉で吹っ飛んでいくようで、思わず涙腺が緩みました。

生きてるだけでいいんですよね、本当に。

その後、よくよく聞いてみると、どうやら戦争中の話をされていたらしく^^;

だけど、あの瞬間はやけにクリアだったなあと、今でも不思議に思います。

Mさん、大切なことを教えてくれてありがとう。

またよろしくお願いします。